2007年02月16日

愛されてる子

朝からテレビのニュースは、殺された小学生のことで持ちきりだった。
大学を自主休講にした私は、遅めの朝食を頬張りながら何気なくニュースを観ていた。
どのチャンネルにしても同じニュースだったので、諦めていたのだ。

画面では、被害者の少女が運動会で走っている姿が流れていく。
数秒間だった。
私は味噌汁を飲む。

『…綾香ちゃんはここに、うつ伏せに倒れていたということです。遺体に悪戯を受けたような痕跡はなく…。』

リポーターは神妙な顔つきで、丁寧に原稿を読み上げる。
別のチャンネルに変えたが、またその『綾香ちゃん』のビデオが流れた。
こちらは音楽会の様子で、大きく口を開いて歌う女の子以外は、モザイクがかかっている。
現場の映像に切り替わると、周囲の家への聞き込みが流れる。もう一度現場に切り替わり、今度は状況を説明し始める。
奥ではさっきの局のリポーターが映っている。
納豆を混ぜながら私は、『みんな、同じ場所にいるのだな』と思った。

遺族の映像が流れ、『将来は女優になってじーじを吉永小百合に会わせてあげると…』と祖父らしき人が涙ぐんでいる。
少女の写真が画面いっぱいに映り、別の場面に切り替わっても右上では少女の顔が留まっている。

『娘が仲が良いものですから…。ええ、うちにもよく…。』
少女の友人の母親がまた、眉間に皺を寄せて悲しそうに言う。

またチャンネルを回すと、その局では小学校の校長が出てきて、『良い子だった。学校に来るといつでも「校長先生おはよう!!」と元気に挨拶する子だった。』と無念気に話す。

先ほどと同じビデオ映像が流れた。

ああ。
この子は愛されていたんだな、と思う。
父に、母に、祖父母に、彼女の周りの世界全てに。

記録されたビデオや写真がそれを物語る。

最近、こんな事件をよく観るな、と思った。

みんな、愛されていた子ども達なんだな。

愛されていたのに。

味噌汁を啜る。

愛されているのに。

ああ。

もしかしたら加害者は、嫉妬したのだろうか。

取り巻く世界全てに愛された、この幼い女の子に。

ニュースが現場からスタジオに戻ると、コメンテーターが自らの意見を喧々諤々語りあっている。
自分の思う犯人像を、怒りを込めつつ語る。

ああ。

もしかしたら羨ましかったのかもしれない。
先生に褒められた子の鉛筆をぽきりと折るように。
ただ嫉妬から、少女を殺したのかもしれない。

本当はただ、殺意なんてなくて。

こんな風に愛して欲しかったのかもしれない。
だから。
ただ、誰かに言ってほしかったのかもしれない。
だから。

だから私は
綾香ちゃんを殺したのだろうか。
posted by み〜ほ at 00:25| 兵庫 ☁| Comment(0) | 創作 | 更新情報をチェックする
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