2007年10月29日

18.伏線

「何しとん?」

ベランダから飛び降りようとしてるわたしを見て、隣の住人が言った。

「見たらわかるやろ。」

「見たら想像はつくけど、想像と実像は別物っちゅーこともあるやん?」

「俺の予想では、自殺しようとしてるように見えるなあ。」

「そうや。それがどしたんよ。」

「どしたんよ、言われてもなあ。」

「とめんといてよ。」

「とめへんけど。
 何で死ぬん?」

「生きとっても、意味ないやん。」

「意味ないから、死ぬん?」

「生きとる意味がないねんもん。
 死んだかていいやん。」

「そら別にせやけど。
 ほんなら死ぬことに意味はあるん?」

「生きとる意味がないから死ぬ、言うてるやん。」

「それは、それだけやろ?
 なら逆に死ぬ意味ないから生きとく、って言えるやん。」

「そんなん屁理屈や。」

「『屁』がついても、理屈は理屈や。」

「でも。
 意味がないねんもん。」

「意味がほしいんやったら、生きとうほうが見付けやすいと思うで。」

「見つけるの、しんどい。」

「そっか。
 何で飛び降りよう思たん?
 ここ、結構人通り悪いから、見つかるまで時間かかると思うで。
 その間に腐ってたら、臭いやん。
 迷惑やで、ご近所に。」

「そんなん、死んだら関係ないやん。」

「あるて。
 お前の死体の第一発見者はショックで気絶するかもしらんし。
 そこに車が来て、轢かれて死んでもたらお前のせいやで。」

「気絶するほうが悪いわ。
 そんなん。」

「あ、そう。」

そういって、隣の住人は、ふと下に眼をやった。

「とりあえず、飛び降りは今日はやめとき。」

わたしも視線を下ろした。

そこには、いつの間に運ばれたのか、大量のマットが敷かれていた。

「想像通りやったから、まあ良かったわ。
 想像と違ってたら、友達にマットあんだけ用意させたから、怒られてまうしな。」

隣の住人は、そういって中に入っていった。




生きることの意味は、未だに見つけられていないが、生きている理由は見つかった。


ミステリーで20のお題中。
伏線というより、ただの時間稼ぎな気も。
posted by み〜ほ at 09:35| 兵庫 | Comment(0) | 創作 | 更新情報をチェックする
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